物価高が続くなか、
「食料品の消費税を1%にする」という議論が注目されています。
消費者から見れば、食料品の消費税が1%になれば、
その分だけスーパーや小売店の商品が安くなるように感じます。
しかし、実際の価格はそれほど単純には決まりません。
日本経済新聞の記事では、ドイツで行われた付加価値税の減税を取り上げ、
減税分のすべてが消費者価格に反映されたわけではないことを紹介しています。
ドイツでは2020年、新型コロナウイルス対策として
付加価値税を一時的に引き下げました。
スーパーの商品価格を調査した研究では、
価格への反映は減税分の約70%にとどまったとされています。
税率引き下げによる価格低下は平均約1.3%で、
残りは企業側に吸収された形です。
なぜ、税金を下げても同じ割合だけ
商品が安くならないのでしょうか?
理由は、食品価格は「消費税だけ」で決まっていないからです。
食品の販売価格には、原材料費だけでなく、
さまざまな費用が含まれています。
●人件費
●電気・ガス代
●包装資材費
●物流費
●店舗家賃
●設備費
●広告宣伝費
●システム利用料
仮に食品の消費税が引き下げられても、
これらの費用まで下がるとは限りません。
むしろ、人件費や光熱費、物流費などが上昇している状況では、
事業者が減税分の一部をコスト増加の補填に回す可能性があります。
つまり、
「消費税が8%から1%になる=店頭価格がそのまま7%下がる」
とは限らないのです。
なお、税込108円の商品が100円になる場合、
税込価格から見た実際の値下げ率は約7.4%です。
「税率が7%下がること」と
「税込価格が7%下がること」は、
厳密には同じではありません。
食料品の消費税を1%にしたところで、
現在の円安・原油高による物価高に対して
どれほどの効果があるのか?
しかも、2年後には戻すということですから、
たった2年間のために消費税が変わることで
様々なコストが掛かることを考えたら、
そもそも実行する意味はあるのか?
疑問です。
さらに、飲食店にとっては、
悩ましい問題があります。
現在、日本では酒類と外食を除く飲食料品には8%の軽減税率が適用され、
店内で提供する外食には10%の標準税率が適用されています。
テイクアウトは原則8%、店内飲食は10%です。
食料品の税率だけが1%になり、
外食が10%のままだとすると、
飲食店には複数の影響が考えられます。
仕入価格が十分に下がらない可能性
食品卸やメーカーが、減税分を完全には価格へ反映しない可能性があります。
仕入先から、「税金は下がったものの、物流費や人件費が上がっているため、納品価格はほとんど変わりません」と説明されることも考えられます。
この場合、飲食店が期待していたほど原価は下がりません。
消費税の納税額だけを見ると増える場合がある
消費税の納税額は、原則として、売上時に預かった消費税から仕入時に支払った消費税を差し引いて計算します。これが仕入税額控除です。
例えば、税抜100円の食材を108円で仕入れ、料理を税抜1,000円で販売した場合を単純化して考えてみます。
現在は、
食材の仕入れ:100円+消費税8円
料理の販売:1,000円+消費税100円
消費税の納付:100円-8円=92円
となります。
食品の税率がゼロになり、仕入価格も100円まで完全に下がった場合は、
食材の仕入れ:100円
料理の販売:1,000円+消費税100円
消費税の納付:100円
となります。
納税額は8円増えますが、
仕入時の支払いが8円減るため、
理論上の損益は変わりません。
問題は、仕入価格が100円まで下がらない場合です。
仕入先が価格を103円に設定した場合、仕入時の負担は5円しか減らない一方、
仕入税額控除は8円分なくなります。
結果として、飲食店側に3円分の負担が残ります。
したがって、飲食店経営者が見るべきなのは「税率」ではありません。
税率変更後の実際の納品価格が、いくらになるのかです。
制度の最終的な設計によって税務処理は変わる可能性があるため、
正式決定後には税理士や会計担当者への確認が必要です。
「外食より自炊」の流れが強まる可能性
スーパーや小売店の食品価格が下がり、外食価格が変わらなければ、
消費者はこれまで以上に価格差を意識するようになります。
例えば、同じような商品でも、
●スーパーの弁当
●コンビニの商品
●飲食店のテイクアウト
●飲食店での店内飲食
を比較し、「今日は外食を控えよう」と考える人が増える可能性があります。
特に影響を受けやすいのは、
価格の安さを主な強みにしている飲食店です。
飲食大手のすかいらーくホールディングスは、
既に減税対策を始めています。
売上の85%以上を店内飲食で占めているリスクを
テイクアウト商品やフードデリバリーの強化で対策を目指しています。
唐揚げやのり弁など、家族で分け合えるように
ボリューム感で勝負するようです。
持ち帰り商品の包装容器やラインアップを見直して、
コスト削減や付加価値を高めるようです。
宅配専用メニューの開発も強化し、
容器も石油リスクに備えて紙の素材に切り替える予定です。
見えている先のリスクに対して、
どれだけ準備ができるかが勝負だと思います。
また、変化はチャンスでもあります。
デリバリー市場に
新しい風が吹くかもしれません。
税率の変更に振り回されるのではなく、
変化をきっかけに経営を強くできるかが問われています。
では、また。



